顧問弁護士

顧問弁護士活用法 第6回~企業法務に対する誤解⑤~

1 はじめに

これまで、裁判についての誤解、弁護士についての誤解を解説しました。皆様のイメージと弁護士の持つイメージ・考え方との差について、ある程度ご理解いただけたと思います。

今回で企業法務に対する誤解についての解説は最終回です。今回は、企業を取り巻く環境についての誤解について解説したいと思います。

 

2 企業法務に対する誤解⑤~企業不祥事が増えたのは悪い経営者が増えたから~

近年、企業不祥事が多発しています。そして、企業不祥事が原因となり、マーケットからの撤退を余儀なくされた会社や利益が著しく減少した会社も少なくありません。そして、企業不祥事の報道を見たとき、決まってあるフレーズが目に入ります。「最近の経営者は昔よりも質が落ちた」というフレーズです。

しかし、企業不祥事が多くなったのは、決して、経営者の質が悪くなったからではありません。従来どおりに経営をしたとしても不祥事になる恐れがあるのです。

これは経営を取り巻く構造が従来から全く違うものになったからにほかなりません。

以前は、企業を取り巻く環境は、行政による事前規制であったものが、1980年代以降グローバル化が進み、自由競争が原則とされたことで事後規制を行うことが増えたことが原因です。

以前は、行政による事前規制があったため、そもそも不祥事を行う企業自体がマーケットに参入することは少なく、企業不祥事の数はそれほど多くありませんでした。しかし、事前規制を撤廃し、自由競争原理を持ち込んだことにより、市場に参入する企業自体の数が増え、ルール違反時に制裁を与えられる企業の絶対数が増えたのです。

しかも、ルール違反時の罰則は、企業がマーケットからの撤退を迫られるほどに重たいものもあり、社会の構造が完全に変容したのです。

その変化に気づかず、コンプライアンスを働かせずに、ワンマン社長が自らの常識のみを頼りとした従来通りの経営をし続けた結果、事後的規制に引っかかり、企業不祥事となっていしまっている場合もたくさんあるのです。

現在の事後的規制を中心とする社会ではたった1つの企業不祥事が、企業そのものの命取りになり得ることを経営者は強く意識するべきです。自らの常識のみにとらわれず、社会からどのような目で見られるのか、不祥事となった場合にどのような影響があるのかを考え、事前に、企業内部をコントロールし、粉飾決算等の不祥事や事故が発生しにくいシステムと、万が一、それらが発生したら被害を最小限に防ぎ、速やかに回復させるシステムを構築させることがこれからの企業経営には必要になります。

経営者は、コンプライアンスを経営の前提条件とし、経営者から企業の末端に至るまで全てに徹底されるという意識を持つことが重要であり、それが実現できなくてはいつか企業が消滅するという危機感を持つことが重要になります。

 

3 最後に

この記事を読まれて、「うちの会社はどうなのだろうか」「顧問弁護士の使い方について話を聞きたい」等がございましたら、一度、弊所までご相談にいらしてください。

企業の業種、状況などから予想されるリスクの種類の大きさのみならず、企業の理念、経営者の考え方などから、その企業ごとにカスタマイズした顧問弁護士の使い方や顧問契約をご提案させていただきます。

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