1 はじめに
新規で取引に入る場合、相手先企業が信用のおける会社なのかどうかを調査することが理想です。
しかし、現実には、弁護士が債権回収の相談を受けた際、この会社は、事前にきちんと企業調査をしていたのかなぁと思うことも多々あります。漠然と「あの会社は多分、大丈夫だろうな」程度の認識でよしとして、事前にしっかりと企業調査をしていないことも多くあります。
そこで、今回からは、企業調査について、どういった観点から行っていくのが有効なのかを弁護士の視点から説明します。
2 企業調査の目的意識
企業調査を行う際には、何のためにそれを行うのか、具体的で明確な目的意識を持つことが何より大切なことなのです。
以前の記事で、企業法務の目的は
①紛争を予測して未然に防ぐこと、つまり、戦わずして勝つこと、
②万が一、裁判になった時に備えて確実に勝訴できるように準備し、現実に裁判に勝つこと、
③徹底したコンプライアンス体制を構築し、
永続した企業経営を行うことと書きました。
企業調査も企業法務の一環ですので、この3つを達成するようにしなければなりません。
例えば、
①企業不祥事についていえば、コンプライアンスの意識の低い会社は、債務不履行を引き起こす傾向にあります。そのため、自社の取引についても債務不履行となる可能性があり、債権回収のための手続きを行わなければならないことになります。また、長期的な安定した経営を行う際に、コンプライアンスの意識が低い会社との取引はそれ自体が紛争リスクにもなります。そのため、企業が永続性を確保するためには、企業調査を行うべきということになります。
②裁判の準備という観点からは、取引に入る前から相手方企業を調査し、どのような契約内容にすれば、裁判上有利になるのかにを分析した上で、取引当初から証拠を確保できるようにしなければなりません。にもかかわらず、企業調査や取引の際の契約書の用意を怠るなど、漫然と取引を開始すると、いざ裁判になったときに、契約書等の証拠が何も残っていないということでは、勝訴することはできません。
③自社の債権を確実に回収するには、債務を履行しない相手方の代わりに支払いをしてくれる保証人や、こちらが差押えの対象にできる相手方の土地等の資産がどこにどういう状態で存在しているかを、取引当初から確実に把握していることが重要です。また、相手方についての金融機関からの借り入れや、その他負債状況及び重要な資産に対する担保設定や差押えの状況、税金の滞納状況を把握しておくことも大切です。
3 さいごに
次回以降、企業調査しない場合、どのようなことになり得るのか、企業調査をどのように行うのかをお話します。
この記事を読まれて、「うちの会社はどうなのだろうか」「顧問弁護士の使い方について話を聞きたい」等がございましたら、一度、弊所までご相談にいらしてください。
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