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取引前の調査~付き合う前の品定め②~

1 はじめに

前回は、企業調査を行う目的についてお話しました。

今回は、企業調査を怠った場合について説明します。

 

2 企業調査を怠ると最終的に手間が増える

債権回収の観点から企業調査を怠った場合にどうなるかを見ていきましょう。

 

(1)債権の強制的な回収手続きについて

取引先が売掛金を任意に支払わない場合に債権者が債権を強制的に回収するには、まず裁判を提起して判決を取得する必要があります。そして、判決に基づいて、裁判所に対し強制執行を申し立て、裁判所に取引先の財産を差し押さえてもらう必要があります。

文字では簡単に説明できますが、これを全て実行することは思いのほか大変です。

裁判に勝つということが、それなりの証拠と準備が必要になり、容易なことではないですし、更に強制執行して債権を回収するということが非常に大変です。

債権者が裁判所に強制執行の申し立てをするとき、債権者が自ら取引先の保有する財産を見つけ出し、具体的に特定した上で申し立てを行う必要があります。例えば、差し押さえたいものが不動産であれば、不動産の所在地を、預金債権である場合、預金先権の内容及び銀行支店名等をそれぞれ特定する必要があります。この自分で相手の財産を調査するということに非常に時間と費用がかかってしまいます。

裁判所が取引先の財産を見つけてくれることはなく、あくまでも全て自分で調査をしなければなりません。

また、取引先の不動産を把握しても、不動産に抵当権がついていれば、債権を回収できる可能性はぐっと下がります。さらに、取引先の預金口座を把握できても、資金繰りに困っているため、支払いを遅滞するというのがほとんどです。そのため、把握できた預金口座にお金が入っていないとか銀行が先に相殺しているために債権を回収できないということは珍しいことではありません。

会社としては、相手方の財産状況等を調査せずに取引を行えば、取引先から債権を回収できないだけではなく、裁判所に納付する手数料や弁護士費用が増えるばかりで経済的な損失を被ることになりかねません。

 

(2)破産されれば債権は回収できない

さらに、取引先が破産手続きを行ってしまえば、債権回収はいよいよ難しくなります。

法人における破産手続きは、債務者が持つ財産を金銭に換価して債権者に公平に配当した上で法人格を消滅させる形で債務をなかったことにする手続きです。

しかし、資金繰りに困り、会社を運営できなくなったからこそ破産手続きを行うので、債権者への配当は、債権額に比べると極めて僅少であり、ほとんどゼロに近い数字になることも珍しくありません。

こうなってしまうと、会社としては、債権額の分だけ丸々損してしまうことになります。

 

もちろん、事前に入念な企業調査を行っていても、予期せぬ出来事の結果、取引先の財務状態が悪化することはあり得ます。しかし、事前に企業調査を行っていれば、債権をみすみす失うことを回避できたという場面も数多く見られます。そのため、取引開始前に入念な企業調査を行うことが極めて重要になります。

現在では、インターネットを利用することで簡単かつ安価に企業調査を行うことができます。その取引先との取引が会社にとってどれほど重要なのかを見極めて、調査事項を決めて適切な調査を行えば、安定した長期的取引につながるかと思います。

 

4 さいごに

次回以降、企業調査の具体的な方法についてお話します。

この記事を読まれて、「うちの会社はどうなのだろうか」「顧問弁護士の使い方について話を聞きたい」等がございましたら、一度、弊所までご相談にいらしてください。

企業の業種、状況などから予想されるリスクの種類の大きさのみならず、企業の理念、経営者の考え方などから、その企業ごとにカスタマイズした顧問弁護士の使い方や顧問契約をご提案させていただきます。

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