顧問弁護士

取引前の調査~付き合う前の品定め③~

1 はじめに

前回は、企業調査を怠った場合について、債権回収の場面を例にとってお話しました。企業調査がなぜ重要なのか、イメージをつかんでもらえたかと思います。

今回から複数回にわたって、具体的に企業調査の方法とどういう情報を読み取るのかについてお話します。

 

2 契約締結交渉前に行うべき調査~法人登記情報編~

企業調査の基本は、商業登記と不動産登記の調査です。今回は、商業登記の入手方法とそこから読み取れる情報についてお話します。

 

(1)登記の入手方法

登記情報を取得するには、従来は、法務局まで行くか郵送でのやり取りによって登記簿謄本を入手するしか方法がありませんでした。

しかし、現在は、登記情報提供サービスというインターネット上のサービスを利用として登記情報を閲覧することで簡単に情報を取得することができます。

このサービスで得られる情報は法務局で取得する登記簿謄本と同一であり、簡単で即座に情報が得られるため、取引先を調査する目的との関係では非常に魅力的な方法です。手数料も、登記1つ辺り335円ほどと登記簿謄本を取得する場合と比較して低額なことが多いです。

法人の登記簿謄本を取得する場合、過去の情報まで記載されている「履歴事項証明書」と最新の情報のみが記載されている「現在事項証明書」、数年前までの情報のみが記載されている「閉鎖事項証明書」が存在します。企業調査の観点からは、できる限り多くの情報を取得する観点から、「履歴事項証明書」が最も多くの情報を取得することができ、なるべく「履歴事項証明書」を取るのがよいことになります。。

 

(2)商業登記から読み取れる事項

法人の登記情報からは、様々な情報が記載されています。各項目からどのような情報を読み取れるかを理解して、対象の会社がどのような会社なのかをしっかりと読み取りましょう。

 

ア 商号

商号とは、会社の正式名称です。商号が頻繁に変更される会社は、以前に支配権をめぐって争われたことがある等経営に不安を抱えている可能性もあれば、振込詐欺の箱として使用されている可能性があるため、注意が必要です。

商号を確認したら、すぐに商号(過去の商号含む。)をインターネットで検索して会社の評判や口コミを調べてください。必ずしも正確な判断ではありませんが、どのような評価を受けている会社なのかを知ることができ、取引の参考になることがあります。

 

イ 本店

本店住所地を把握したら、グーグルマップ等で本店所在地を検索すれば、入っているビルや会社の経営状況や価値観を推測することができます。

本店が頻繁に移転している場合には、会社が急激な成長を続けて短期間に引っ越しを繰り返しているというような事情がないのであれば、その理由について説明してもらうべきでしょう。場合によっては、入っているテナントのオーナーと事あるごとに衝突している等、取引する上で問題となる事情が隠されているかもしれません。また、事業規模に比していかにも高額な賃料を支払っているのであれば、その理由も聴取したいところです。

 

ウ 会社成立の年月日

会社成立の年月日は後に変更することができませんので、歴史がある老舗の会社であるのか、それとも新参の会社であるかを把握することができます。老舗であれば長年その業界で存続しているわけですから、それなりにしっかりとしている会社であるといえます。

もっとも、会社の存続期間が長くとも、(登記簿上は確認できませんが、)直近でM&Aにより株主が変わっているような場合には、新規に設立した会社と大きく変わらないということもあり得ます。会社の存続期間だけで信用しないように注意してください。

 

エ 目的

目的欄には、その会社がどのような事業を営んでいるのかを記載しています。事前に聞いていた事業と比べてあまりにも多い分野に関する目的や関連性が薄い目的が掲げられている場合には、何をしている会社か不明であることはもちろん、場合によっては、犯罪等に使用するために建てられたペーパーカンパニーである可能性もあるため、注意して契約交渉に入る必要があります。

 

オ 役員に関する事項

役員欄には、代表取締役と取締役の名前が記載されています。特に、代表取締役については、自宅住所地も記載されています。

また、代表取締役の自宅住所の不動産は調査しておくべきです。代表取締役の自宅が持ち家であれば、取引で何かある場合に備えて自宅に抵当権を設定することも考えられます。次回説明する不動産登記情報からは、代表取締役個人が税金滞納による差し押さえを受けていないか、金融機関からの借り入れについて抵当権が設定されていないか等も調査することもできます。

取締役が一斉に退任しているような場合には、会社内で何らかの大きなトラブルがあった可能性がありますので注意が必要です。

3 さいごに

次回は、不動産登記の取得方法と不動産登記から読み取れる情報についてお話します。

この記事を読まれて、「うちの会社はどうなのだろうか」「顧問弁護士の使い方について話を聞きたい」等がございましたら、一度、弊所までご相談にいらしてください。

企業の業種、状況などから予想されるリスクの種類の大きさのみならず、企業の理念、経営者の考え方などから、その企業ごとにカスタマイズした顧問弁護士の使い方や顧問契約をご提案させていただきます。

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