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取引前の調査~付き合う前の品定め④~登記簿から読み取れる情報

1 はじめに

前回は、法人の登記情報の取得方法と法人の登記情報から読み取れる情報についてお話しました。

今回は、企業調査の基本の一つである不動産の登記情報についてお話しします。

 

2 契約締結交渉前に行うべき調査~不動産登記情報編~

(1)登記の入手方法

不動産の登記情報を取得する方法は、法人の登記情報と同様に法務局から取得するか、登記情報提供サービスで、登記情報を閲覧するかの2通りになります。

ただし、不動産登記情報を取得する場合、注意点があります。

不動産登記における不動産の「所在」「地番」は住所と必ずしも一致しておらず、不動産登記情報を取得するためには、対象不動産の特定として所在地の住所だけではダメで、土地ではあれば「地番」、建物であれば「家屋番号」が必要になります。

全くもって不便だとは思いますが、このように決められてるのでどうしても必要になります。

これらについても、有料ですがインターネットで調べることができますので、必要に応じてこれも活用してもらえばよいと思います。

 

(2)商業登記から読み取れる事項

不動産登記も様々な項目に分かれています。各項目からどのような情報を読み取れるのかを知っておくことが、企業調査のために必要になります。

 

ア 表題部

不動産登記の冒頭部分「表題部」という項目がありますが、この部分には土地であれば、当該土地の所在・地番・地目・地積等が、建物であれば、所在・家屋番号・種類・構造・床面積等がそれぞれ記録されています。

不動産の面積に、路線価・公示価格・売買事例価格等を当てはめることによって、対象不動産のおおよその価値を把握することができます。会社が当該不動産の所有権者である場合には、その不動産を抵当権等の担保権の設定対象としたり、債権回収時に差押対象にしたりすることが考えられます。

 

イ 権利部(甲区)

次に、「権利部(甲区)」という項目があります。この項目には、対象不動産の所有権に関する事項が記載されています。

この項目の「権利者その他の事項」欄を見れば、対象不動産の歴代所有者が判明します。また、「原因」欄を見れば、所有者が、いつ、どのような原因で誰から対象不動産の所有権を取得したのかが判明します。また、仮差押え・差押え等の所有権を制約する事項についても記録されます。

例えば、この項目で、取引予定の会社ではなく、第三者の名前が記載されている場合には、その会社は不動産の賃貸を受けており、不動産資産は持っていないであろうことがわかります。また、その会社が、不動産を保有していたとしても、国税による差押えが登記されているような場合には、税金の支払いが遅滞するほど資金繰りが行き詰っていることが判明します。そのような会社と取引したとしても支払いがされない可能性が大きいといえ、事情を聴取すべきですし、取引すべきかを考える大きな考慮要素となります。

 

ウ 権利部(乙区)

次に、「権利部(乙区)」という項目があります。この部分には、抵当権をはじめとする、所有権以外の権利関係に関する事項が記録されています。

この項目に「登記の目的」欄に抵当権などの所有権以外の権利関係に関する事項が記録されています。

「登記の目的」欄に抵当権設定との記載があれば、対象不動産には抵当権が設定されていることがわかります。また、「権利者その他の事項」欄のうち「抵当権者」を見ればどのような金融機関から借り入れているのかを、「債権額」を見れば、どの程度の金額を借り入れているのかを把握することができます。

例えば、である場合、大手の銀行から融資を受けられないほどに経営状況が悪化していることが予想されます。

これらの場合、取引の金額を小さくする、または取引自体を断念する等の判断になります。

 

エ 「共同担保目録」

1つの不動産だけでは融資金額を担保できない場合、複数の不動産を担保として差し出させたうえで融資するという手法がよく取られます。これを共同担保といいます。

例えば、土地と土地上の建物を購入する際に借り入れを行い、土地と建物双方に抵当権を設定した場合には、土地と建物には共同担保が設定されていることになります。

「共同担保目録」欄の調査により、関連不動産を把握することができます。場合によっては、他に所有している不動産等が見つかり、芋づる式に会社の資産が見つかる可能性があります。

 

3 さいごに

前回と今回で、企業調査の基本である法人の登記情報と不動産登記の取得方法と読み取れる情報についてお話ししました。次回は、これら以外の方法でどのような情報を取得することが可能なのかについてお話しします。

この記事を読まれて、「うちの会社はどうなのだろうか」「顧問弁護士の使い方について話を聞きたい」等がございましたら、一度、弊所までご相談にいらしてください。

企業の業種、状況などから予想されるリスクの種類の大きさのみならず、企業の理念、経営者の考え方などから、その企業ごとにカスタマイズした顧問弁護士の使い方や顧問契約をご提案させていただきます。

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